皆さんこんにちは。ものを書いて生活するフリーランス「モリセ」です。
広報で正社員として長く働いたあと、2022年からフリーランスの取材屋として働いています。年商はいちおう、同年代男性の平均ぐらいをキープしています。
このニュースレターでは、「文字を書いて生活する技術」について、プロとして色々考えてきたこと・学んできたことを、皆さんとシェアしています。
記念すべき第一回は、「物書きとして生きていきたいなら、取材をするべき」というテーマについて。
ライターやジャーナリスト、研究者、小説家など、「もの書いて暮らす人」や、もの書いて暮らす人になりたい! と考えている人の参考になれば幸いです。
「ライターやジャーナリスト、研究者、小説家」……。
この言葉を読んだとき、あなたは「範囲広すぎ」と思ったかもしれません。分かる〜😘(急に出てくるギャル)。ジャーナリスト、研究者あたりは分かるけど、小説家まで取材必要か?! と思いますよね。
というわけで、なんで物書きが取材をすると「よい」のかについて、色々理由を説明します。
理由1●まだこの世に出ていない情報を引き出せるから
まずは、とにもかくにもこれ。
企画や取材では、相手がこれまで考えたこともなかったような考えを、取材中に引き出せることがあります。
これが手に入ると、めちゃくちゃ強い。その情報を持っている人は、今現在、世界でその人とあなただけ、ということになります。これは情報としてめちゃくちゃ価値が高いのです・・・!
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さらに、こういう知識たちがどんどん集まっていくと、あるとき急に、「あれ? これって◯◯の分野でも似たようなこと、あったな」というひらめきが生まれます。
そうなると、最初は「聞くだけの素人」「誰かの言っていることを復唱するだけの人」だったあなたが、じょじょに「その共通点についての専門家」になれたりもするんですよね〜。これ、めっちゃ楽しいですよ!
要するに、「私しか知らないこと」を見つけるためには、「私の知らないこと」を大量に知識としてインプットする必要があるのです。
人間ひとりが頭のなかで考えられることって、どうしても限界があるもの。誰の意見も聞かずに作った「僕の考えた最強のオピニオン」は、100%、浅いのです。これは99.9%とかではなく、確実に浅いと断言してよいでしょう。過去の小説家ワナビーだった23歳の私、聞いてるか? お前の小説、死ぬほど浅いぞ☺️✨
自分で考えて、勉強して、そのうえで取材対象からの言葉が蓄積していくことで、「自分にしか書けない記事」が生まれていくのです。アウトプットは、インプットありき、なのですね。
理由2●架け橋なれるのはLANAだけ(LANA/直線)
もちろん、どんな取材でも「初出し情報」だけが得られるわけではありません。
取材によっては「これは基礎的な知識なんですが……」というようなトーンで、すべての回答をもらうこともあります。特に、こちらの知識レベルがそこまで高くないときは、こういう取材になりがち。
そういう場合でも、「今、あなたが知った」ことに強い意味が生まれるケースが多々あります。
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たとえば取材した保育士さんが、子供と安全に・楽しく・大人はなるべく省エネで遊ぶスキルを披露してくれたとしましょう。
保育士さんの世界では、そんなの「誰もが知ってて当たり前」なのかもしれません。
でも、あなたが普段接している全ての人が、その知識を「知っていて当たり前」か、というと……。多分、知らない人のほうが多いと思うのです。
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たとえば、こんな記事があったら、結構需要があると思いませんか。
「保育士直伝。死ぬほど眠い日でも子供を楽しく遊ばせる方法20選」
少なくとも、私は読みたいです。ターゲットをズラすことで需要が生まれることって、しょっちゅうあるのです!
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世の中には、意外なほどに、「インターネットに公開されていない情報」や、「需要のある人に向けて書かれていない情報」がたくさん眠っています。
それを聞き取り、言葉にできる人は、今この世に、自分しか存在しない! この世界とあの世界をつなぐ橋として、あなたが書かねばならない「理由」が生まれるのです。激アツ!
理由3●人間にしかできない仕事だから
これは、上記2つの理由とちょっと重なるのですが……。
取材→アウトプット、人間にしか、できません!!!!!
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……こういうことを言うと、おいおい、それは言い過ぎだよ、と思われる方もいらっしゃると思います。
「AIの技術の向上、知らんのか? めちゃくちゃアウトプットの役に立ちますけど??」と。分かります。私も実は、ChatGPTやClaudeがサービス開始した当初から有料会員で、毎日使っているのです。AI技術、めちゃくちゃ重宝しているのです(この記事はオール手打ちで書きましたが……)。
でもですね。
AIがアウトプットの役に立つな、と思っている人は、アウトプットに慣れすぎているんです。全人類があなたみたいなノリでアウトプットできると思ったら大間違い!!! 気をつけて!!!
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取材をする人のなかには、「伝わる言葉でアウトプットするのに慣れていない人」が多く存在します。
そう。多くの人は、私やあなたのように、ブログやSNSで「最近考えていること」を長文でズラズラズラーッと書いたりしないのです。
さて、アウトプットを日常的にしない人にとって、アウトプットとは「面倒で嫌なこと」だったりするケースもあります。そういう人にとって、取材→アウトプットって、めちゃくちゃ嬉しい(こともある)。
たとえばこんな感じです▼
これ、めちゃくちゃ嬉しいと思いませんか。
AIを使ったアウトプットに慣れていたとしても、自分ひとりでAIと喋るだけでは、こういう「嬉しさ」は得られません。
AIは超優秀です。それは間違いありません。でも、多くの人間は、「AIと一緒に作る」以前の、前提となる部分でつまずいています。だから、言語化は、技術的に可能だったとしても、不可能。
その「つまずき」に橋をかけ、上手にアウトプットまで持っていくのが、取材する人の仕事なのです。
理由4●戦いのなかで成長できるから
身につけたスキルが無意味なものにならない/真似されづらい、というのもポイントです。
取材は、会話に似ています。つまり、「やってみないと上手くならない」部分がかなり大きいわけです。
かくいう私も、取材を始めた当初は、取材下手すぎ列伝を炸裂させまくっていました。詳細に思い出そうとすると、私の自我が「殺してくれーーーっ!」と叫び出すので、あまり思い出さないことにしています(が、恥を忍んで、そのうちニュースレターで書きます)。
……というわけで、どれだけノウハウを書き溜めたとしても「ノウハウを知っている人が急に勝つ」みたいなことになりづらいのです。
私は、稼ぐための要領の悪さにだけは自信があります。このため、インターネットで、初手からスパーンと儲かるルートに乗っかれたフリーランスの方などを見ると、嫉妬で気が狂いそうになります。
でも、私が薄給でヒーヒー言いながら身につけた取材のスキルは、稼げていようが稼げていなかろうが、着実に私の経験値として積み重なっています。
「この人は稼げてるかもしれないけど、私のほうが取材は上手いな……」と思えれば、嫉妬で狂いそうになった自分も正気に戻せるというもの。
私のように要領の悪い人間は、要領のよさを磨こうとして爆死するより、要領悪いなりにスキルを積み重ねていくほうが、段違いに安心できるのです。
ちなみに、取材が上手になると、日常会話がちょっと得意になります。プライベートでも「楽しい人」として認識してもらえるようになるので、私は取材を生業にして良かったなあといつも思っています。
理由5●食いっ逸れる事ナシ(Creepy Nuts/ビリケン)
これは、ライターとしてもの書きをしたい人へのおすすめポイントです。
ライターって、AIの登場で、経験を積むのが異常に難しくなりましたよね……。以前はフワフワーッと個人ブログのSEO記事なんかを書いていれば、ど素人でも、お金をもらって勉強することができていたのですが。そういう案件は、AIの普及以降、一気に単価が下がってしまいました。
あとは、ぐちゃぐちゃな言葉で書かれた記事をリライトするスキルなどは、これまではそれなりに重宝されていたのですが……。今、このあたりは、AIがめちゃくちゃ得意としている領域ですね。
今後、AIはどんどん、「大量のデータをインプットして、きれいにアウトプットする」技術を高めていくことでしょう。人間がそこでAIと張り合うのは、かなり無謀な戦いといわざるを得ません。その技術で生き延びようとする人は、多分、脱落していくんじゃないかと私は思っています。
というわけで、無駄な戦いはやめて、さっさと「人間にしかできないこと」に注力するのがいいんじゃないかと私は思っています。それが、「生身の人間として、おしゃべりをすること」です。
人との会話という形で、はじめてアウトプットできるようになる人は、多分AIが普及した社会でも、ずっと存在し続けるはずです。ここを狙うのが重要だ……というのが、生成AIをここ2年ほどずっと業務で使い倒し、AI普及以降の社会について考え続けてきた私の結論です。
もちろん、これ以外の方法でAIに対抗する手段はたくさんあると思うのですが……。私はひとまず、「取材する」という方向で、自分を方向づけようと決めました。
そんなわけで今回は、取材がなぜよいのか、ということについて考えました。
次回からは、取材の具体的な進め方について書いていきたいと思います。乞うご期待!
質問も随時受け付けています。質問がきたらめちゃくちゃ喜んで答えるので、ぜひお気軽にどうぞ。
「こいついいこと言うな」と思われた方、ぜひニュースレターを購読してみてください。きっと私とあなたは気が合うと思うので、お友達になってください。
では、またお会いしましょう〜。